『天才時計師』、『時の哲学者』、フランク ミュラー氏を称える言葉には枚挙に暇がありません。
1958年スイス時計産業の中心地ラ・ショー・ド・フォンに生まれた彼は、幼い頃から時計づくりに目覚めます。
ジュネーブ時計学校では3年間で履修するべき単位をわずか1年間で修得し、最高賞を含め数々の優秀賞を授与されました。
卒業後はコレクターやミュージアムなどから、希少な時計の修理を依頼されるようになり、時計師としてのキャリアをスタートさせました。
1986年にはフリー オシレーション(自動振動)トゥールビヨンを発表し、世界に衝撃を与えました。
その後も数々の世界初となる複雑機構を発表し続け、いつしかフランク ミュラーは『Master of Complications』として知られるようになりました。
1992年、フランク ミュラーは自らの名前を冠したブランドを設立。
一人でも多くの時計愛好家が、自身の時計作品を身につけることができるよう、新たな道へ踏み出し現在に至ります。
ここでは、数回に分けてフランク ミュラーの作品や、腕時計製造に関連するすべての工程が行われる『FRANCK MULLER WATCHLAND』についてご紹介していきます。
スイスの最西端に位置し、フランスとの国境に面したジュネーブは、多くの国際機関が拠点を置く、政治・文化・経済の中心地であり、ヨーロッパ屈指の国際都市です。
旧市街には中世の街並みが残り、歴史的な建築や博物館も多く、文化的な豊かさも魅力のひとつ。
また、スイス時計の名門ブランドが本社や工房を構え、スイス時計産業の重要な役割を果たし、いまも変わらず伝統の時を刻み続けています。
ジュネーブの市街地からほど近く、レマン湖と雄大なアルプス山脈を望む丘陵地帯に、フランク・ミュラー氏が自らの理想の時計づくりを追求するために建造した『FRANCK MULLER WATCHLAND』があります。
時計製造には、開発設計からパーツ製造、組立てなど数多くの工程と長い時間を要します。
ウォッチランドでは、企画からデザイン、設計、製造、装飾、組立て、検品といった時計製造に関するあらゆる作業が、自社一貫製造のマニュファクチュール体制として行われています。
時計づくりを巡る長い旅路は、デザインから。
デザインプロセスは、まずアイデアのスケッチから始まります。
新たな視点や解釈により、独創的な物語がスタートします。
フランク・ミュラーのデザインアイコンである、トノウカーベックス。 ムーブメントとの一体感あるフォルムはマニュファクチュールならではの強みであり、独自の複雑機構クレイジーアワーズはその本領を存分に発揮します。
外装とムーブメントの理想を追求する設計部門では、3次元CADソフトを使って、あらゆる角度から検証を繰り返し、外装とムーブメントを設計します。
2次元のデザイン画を3次元で再構築していく作業は、デザインでは描かれていないケースのカーブや、ムーブメント収納を計算した設計図を完成させ、デザイナーとの検証が行われていきます。
その後、プロトタイプを製作し、問題点の抽出と修正が繰り返され最終確認が済むと、製造の段階へ進んでいくことになります。
フランク・ミュラーの人物像や、時計づくりに懸ける情熱を少しでも感じていただけたでしょうか?
次回はさらに詳しく内部の機構やパーツに焦点を当て、職人たちの卓越した技術をご紹介します。
Vol.2 ぜひ、お楽しみに!